【考察】個人事業主のための特定商取引法に基づく記載

【考察】個人事業主のための特定商取引法に基づく記載

2018年9月4日

まほろば@mahoroba148です。

ネットショップの開設、クリエイターであれば一度は考えたことがあるのではないでしょうか?

  • 自分で作詞作曲した歌のCDを売りたい
  • デザインしたTシャツを売りたい
  • ハンドメイドアクセサリーを売りたい

などなど。

私自身も、音楽活動をしていることもあり自分のCDをインターネット販売したいな!と思ったことがありました。

現在ではネットショップも無料で開設できる時代です。

  • BASE
  • STORES.jp
  • カラーミーショップ

などなど。

直感的な操作で開設できるところやクレジット決済の代行などもしてくれるのが魅力的です。

※開設は無料ですが、売上の何%や決済時等に手数料がとられることが多いです

しかし、個人でネットショップをやりたい場合に立ちはだかる問題があります。それは、

特定商取引法に基づく記載

簡単にいうと、ネットショップを開設するには個人の住所や電話番号を記載する必要があります。

副業として始めたい方はもちろん、個人事業主の方は自宅で開業されている方も多いことでしょう。その場合は自宅の住所や個人的な電話番号をインターネット上に晒す必要があるのです!

女性の一人暮らしだったり、家族が一緒に住んでたりした場合には抵抗がありますよね…。

そこで、今回は個人事業主のための特定商取引法に基づく記載について私なりに考察してみました。

特定商取引法について

特定商取引法とは、通信販売などの特定の取引において、消費者を守るための法律です。

特定商取引法ガイドにはこう書かれています。

特定商取引法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。 具体的には、訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています。

特定法取引法ガイド「特定商取引とは」http://www.no-trouble.go.jp/what/ から引用

クーリング・オフと聞くとイメージがつきやすいのではないでしょうか?

特定商取引法の対象となる取引は以下の通りです。

※参考:特定商取引ガイド「特定商取引法とは」http://www.no-trouble.go.jp/what/

  • 訪問販売
  • 通信販売
  • 電話勧誘販売
  • 連鎖販売取引
  • 特定継続的役務提供
  • 業務提供誘引販売取引
  • 訪問購入

ネットショップは「通信販売」に当てはまります。

その他わかりにくいものだけ補足すると、

  • 連鎖販売取引・・・マルチ商法のこと
  • 特定継続的役務提供・・・エステティックサロン、学習塾、パソコン教室など計7つの役務が対象
  • 業務提供誘引販売取引・・・商品購入する必要があるモニター会員やタレント事務所などのレッスン代を支払い事務所と契約する行為

特定商取引法に当てはまる取引は、事業者と消費者の間でトラブルになりやすいものが対象となっていることが感じられますね。

特定商取引法に基づく記載がないとどうなる?

特定商取引法に基づく記載がないと、業務停止命令や業務禁止命令、罰則の対象となります。

特定商取引法には氏名等の明示の義務付けが含まれています。そのため記載がないと違法となるのです。

特定商取引法では、事業者に対して、消費者への適正な情報提供等の観点から、各取引類型の特性に応じて、以下のような規制を行っています。特定商取引法の違反行為は、業務改善の指示や業務停止命令・業務禁止命令の行政処分、または罰則の対象となります。

 

  • 氏名等の明示の義務付け
    特定商取引法は、事業者に対して、勧誘開始前に事業者名や勧誘目的であることなどを消費者に告げるように義務付けています。
  • 不当な勧誘行為の禁止
    特定商取引法は、価格・支払い条件等についての不実告知(虚偽の説明)又は故意に告知しないことを禁止したり、消費者を威迫して困惑させたりする勧誘行為を禁止しています。
  • 広告規制
    特定商取引法は、事業者が広告をする際には、重要事項を表示することを義務付け、また、虚偽・誇大な広告を禁止しています。
  • 書面交付義務
    特定商取引法は、契約締結時等に、重要事項を記載した書面を交付することを事業者に義務付けています。 

特定法取引法ガイド「特定商取引とは」http://www.no-trouble.go.jp/what/ から引用

特定商取引法に法人も個人もありません。

ネットショップを開設の際には、特定商方取引法に基づく記載が必要です。法人であれば事業所の住所や連絡先、個人であれば戸籍上の住所や連絡先が必要です。

具体的な記載方法に関しては「特定商取引法に基づく表記」と検索すると、例題が出ていますのでここでは割愛します。

住所等を掲載したくない!考えられる方法

住所等の掲載が義務とわかった上で、記載しなくてもネットショップを開設できないか考えてみました。

※あくまで考察なので実際行う場合は自己責任でお願いいたします。

レンタルオフィスを借りる

自宅とは別に実在するオフィスを借ります。営業拠点であれば認められるようです。

マンションでも事務所可能(店頭販売を除く)な部屋があります。場所や部屋数をこだわらなければ、私が住んでいる静岡県浜松市なら家賃2万円以下もあるようです。

当然のことですが、部屋代や光熱費などが必要です。電話番号も掲載したくなければ新規電話回線の契約も必要ですね。

  • メリット:プライベートがしっかり確保できる
  • デメリット:家賃や光熱費などのコストがかかる(高い)

バーチャルオフィスを借りる

バーチャルオフィスでは住所貸しをしてくれます。他県にいながら東京や大阪など一等地の住所を構えることも可能です。

レンタルオフィスより比較的安く、郵便物の自動転送や電話の代行、会議室の貸し出しなどオプションも豊富です。

バーチャルオフィスなら東京都千代田区に登記することもできる

しかし、バーチャルオフィスは、あくまで住所貸しサービスのため実在はしません。実際の活動拠点と住所が違うというと印象はあまり良くないですね。

また、特定商取引法に基づく記載では契約事務所として記載します。

詳しくは後述します。詳細はこちらをクリック

  • メリット:レンタルオフィスよりコストが低い、東京や大阪などの一等地の住所が使える
  • デメリット:実際の活動拠点と住所が違うため印象が悪い、契約事務所として記載※詳細は後述

委託販売をしてもらう

他のお店に自分の商品を販売してもらいます。販売主は委託先になるため、特定商取引法に基づく記載には委託先の住所等が記載されます。

委託先には連絡先等を知らせる必要はありますが、不特定多数に見られるわけではないので安心です。

ただし、委託販売してもらうということを忘れてはいけません。

掛け率(委託販売手数料)はどうするか、発送は?在庫管理は?委託販売のルールを話し合いましょう。

委託販売のルールがないと、後々問題になりかねません。お互いが納得できるルールを定めましょう。

  • メリット:自分の住所等掲載しなくてよい(委託販売のルールによっては発送などの手間がない)
  • デメリット:委託販売のルールを話し合う必要がある

イベントに出店する(直接取引)

いっそネットショップをやめてしまう方法。特定商取引法に当てはまらない販売方法であれば記載の必要がありません。(特定商取引法については前述しています)

各地でハンドメイドアクセサリーや手作り家具などを集めたイベントが行われています。

私もよくお客さんとしてイベントに行っています。私のようにイベント目当てで来られるお客さんもいらっしゃいますので、比較的売りやすい環境です。

各地で擬似的に店舗を持てること、お客さんや出店者同士の交流は将来的にもメリットがありますね。

出店料はイベントによって異なります。500円で出店できるイベントもあれば、数千円かかるところもあるようです。

デメリットとしては雨天・荒天時の対応もイベントによって異なります。イベントが中止になっても出店料は戻らない場合もあります。

もちろん、遠いところでの出店なのに、電車などの運休で移動手段がなくなってしまえば、出店もできません。

イベント出店は予期せぬトラブルに巻き込まれやすいです。

  • メリット:特定商取引法に当てはまらない、お客さんや出店者同士の交流ができる
  • デメリット:イベント会場の移動や準備が必要、天候などのトラブルに巻き込まれやすい

バーチャルオフィスでは万事解決できない

バーチャルオフィスでは住所貸しをしてくれると前述しました。

しかし、特定商取引法に基づく記載では契約事務所という注意書きが必要です。

住所:〇〇県〇〇区〇〇(バーチャルオフィスの住所)

※記載の販売者個人情報は弊店契約店舗のものです。取引時に請求があれば遅滞なくご連絡します。

結局、広告表示事項の省略と同じ扱いなのです。

特定商取引法に基づく記載の省略について

※参考:特定商取引法ガイド「通信販売」http://www.no-trouble.go.jp/what/mailorder/

実は特定商取引法に基づく記載では住所等を省略できる場合があります。

広告スペースには限りがあります。掲載事項をすべて記載することは難しいかもしれません。

そのため下記の場合は省略できます。

  • 請求があれば遅滞なく知らせることを広告に記載すること
  • 実際に請求があった場合に遅滞なく知らせること

省略できる事項も決められています。間違えないようにしましょう。

バーチャルオフィスと省略は同じ扱い

どちらも請求があれば遅滞なく知らせないといけません。

つまりはバーチャルオフィスを借りたからといって、住所等を知らせるリスクが0になるわけではないのです。

また、バーチャルオフィスを利用した場合や省略した場合の注意事項を記載していなければ違法です。

問い合わせられたくないからといって注意事項までも省略しないようにしましょう。

某ネットショップに問い合わせをしてみた

あるネットショップの特定商取引法に基づく記載が間違っているのでは?と実際に問い合わせてみました。

状況としては

  • 委託販売ではない
  • ネットショップサービスを利用している
  • 特定商取引法に基づく記載の住所はネットサービスを提供している会社の住所である

ショップの開設を検討しているということで、問い合わせはネットショップサービスを提供している会社に行いました。

問い合わせの回答

※プライバシー保護と読みやすさを考慮して文章を校正しています

〇〇日より弊社の住所が記載されている場合や特定商取引法に基づく記載に不備がある場合は、ネットショップオーナーに通告し、改善がみられない場合にはショップを一時非公開にさせていただく場合がございます。

回答をみる限りでは、提供会社の住所等を記載しても良いとなっていたのかもしれません。

しかし、提供会社の住所等の記載は正しい情報ではありません。それに気づき、ネットショップサービスの規定が変更になったのだと予想されます。

また、規約の変更がショップオーナーに伝わっていないため、提供会社の住所等が記載されたままになってしまっているようです。

簡単に開設できるからといって安心していると危ないですね。

最後にネットショップの回答のつづきを追記しておきます。

要件をみたせば省略ができる内容であったとしても、購入者の安心・安全のために特定商取引法は重要な情報です。

弊社の方針といたしましては、 販売業者様または役務提供事業者様には、正しい記載をお願いしております。

【まとめ】個人事業主としての自覚と覚悟

今回は個人事業主のための特定商取引法に基づく記載について私なりに考察してみました。

個人の住所や連絡先の記載に抵抗がある方がほとんどだと思います。正直、私自身も記載がネックでネットショップの開設に足踏みをしています。

しかし、ネットショップも商売の一つです。個人の方でもモノを売る、サービスを売るからには個人事業主のとしての自覚と覚悟が必要です。

また、私のようにすでに個人事業主として開業している方も同様です。

特定商取引法は消費者を守るための法律です。消費者を守ることは事業者の信頼へとつながることでしょう。